白と黒の世界
おとなりの白い壁に写った
黒い模様は
ここにアトリエを構えてからずっと
伸び続けている
樹木の影、木陰(こかげ)です
だれが植え付けたわけでもなく
自然に生えて大きくなった
この子の名前をまだ知りません
ある年の夏
伸びすぎていたのでしょう
気がつくと枝はすっかり切られて
〝はげちゃびん〟にされていました
いつのまにか
裏のお宅のお庭に
おじゃましていたみたいです
けれどもこの子はたくましい
今年の酷暑もへっちゃらで
気がつけば
屋根より高くなっていました
小春日和と呼ぶには暑かった今日
秋らしい澄んだ空気を通った日差しが
くっきり鮮やかな
『白と黒の世界』を
描いていました
『白と黒の世界』は
画家で童話作家〝東君平〟さんが
好んで表現されていた世界です
小さな一枚の黒い紙の中に
仔犬が一匹座っているのをみつけて以来
黒い紙の中にいる動物や鳥たちを
〝掘り出して〟
(ちょきちょきと細かく切り絵にして)
彼らに
いろんな夢を
語らせてきたそうです
「色がないんじゃない
色は、いらないんだ」
アンパンマンの作者
故〝やなせたかし〟さんもその才能に
一目おかれていたそうです
〝君平さん〟だから見えていた
『白と黒の世界』
その豊かなる想像力(イマジネーション)を
ときどき絵本や童話を開きながら
あまり意識しないで自然に
育てています
アトリエのうらの
小さな〝お庭〟で
大きくなった樹木みたいに